(3)VISION
これからについて
私はメディア芸術コースに転入後、環境音を含む音楽や映像を用いたインスタレーションを通して、人の生活や記憶の中の感覚を表現したいと考えています。
私は生活の中のふとした瞬間に幼少期の記憶を思い返すことがあります。その記憶は朧げながら、どこか心地よく大切なものに思え、それと同時にその記憶には二度と触れることはできない現実が突きつけられました。
そうした記憶や感覚を作品を通し表現し、鑑賞者が自身の記憶に対してもう一度思い返すきっかけを作ることが私のテーマとなりました。
記憶というものに対して考えるようになったのには、多くの時間をひとりで過ごした幼少期や今まで触れてきた作品からの影響が大きいと思います。
私は幼少期からひとりで静かに過ごす時間が好きでした。それは両親の帰りを待っている時、祖父母の家でただ外を眺めていた時、部屋でひとり時計の音だけが聞こえていた時など、その時間だけはどこかゆっくりとした時間が流れているのを感じた覚えがあります。
また、ゼロ年代のセカイ系アニメやノベルゲームなどに多く触れてきたことで、抽象的な演出やノスタルジックを感じる表現に興味を持ちはじめました。
しかし、近年は私が懐かしいと感じる表現がY2Kカルチャーのリバイバルとして消費されているように感じることがあります。そのため、記憶を誇張して当時を模倣するのではなく、記憶を思い返す行為を通じて感じたことを新たな作品として昇華させてゆきたいと思います。